真夏の夜の怪談

ある夏の夜の話。
深夜のテレビで稲川淳二が例によって怪奇話を披露していた。
私はこの手の話が大好きだ。

いかにも、怪談っぽいウソくさい話であっても彼の話し方は雰囲気があってつい聞き入ってしまう。

CMに入ったのをきっかけに我慢していた小便をするためにトイレに立った。

こんなときは自分の家であってもやはり、気持ち悪い。
いつもより、早く電気をつけたい気持ちで壁のうらにあるスイッチに遠くから手を伸ばした。

と、その瞬間、恐ろしいことが起こった。

「スゥ~~~」

私の二の腕から手首に向かってナニかに撫でられたのである。

ただでさえ、稲川淳二に脅された直後である。「出るゾ、出るゾ」といわれて現実に幽霊に出くわした時の恐怖。

瞬間、ゾ~~~っとするのだ。表現としてはあっても
実際には恐怖で背筋がゾ~~~っとすることなんてほとんどないものだ。

あせって電気をつけた。私がそこに見たものは…

トンデモナイものだった。

近寄りたいとは思わなくても窮鼠は猫を噛む。ハチ遭わせれば一刻も早く正体を確かめ
ずにはいられない。

それは、床を這って逃げる一匹のゴキブリだった。

怖いから早く電気をつけようとあせる私の腕の上に、上から降ってきたか、それとも飛んできたか、私の腕に着地し、撫でるように走り去っていったのだった。

自分の腕の上をゴキブリが這っていったことを知って、またもや

恐怖で「ゾ~~~」っとした。

怪談を聞いた直後、電気をつけようとあせる腕
たまたまゴキブリが降ってきて、腕の上を走り去る。

この作り話のようなタイミング。これは本当にあった話である。

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